第55期A級順位戦



全日程が終了した。名人挑戦権は7年ぶりに谷川竜王の手に渡った。
降級は森九段と村山八段。

      

順位棋士名123456789勝敗
1森内俊之八段
米長


佐藤


谷川

村山

森下

中原

加藤

6-3
2森下 卓八段
佐藤

村山

加藤

米長

中原


森内

谷川


5-4
3 米長邦雄九段
森内

中原

村山

森下


加藤

佐藤


谷川

3-6
谷川浩司竜王
村山

佐藤



森内

中原

加藤

森下

米長

8-1
5島  朗八段
加藤

森内

中原

谷川

米長

森下


佐藤

村山

4-5
6 中原誠永世十段

米長


加藤

森下

谷川

村山

森内

佐藤

4-5
7加藤一二三九段


森下

中原

佐藤

米長

谷川

村山

森内

4-5
村山 聖八段
谷川

森下

米長

佐藤


森内

中原

加藤


3-6
9佐藤康光八段
森下

谷川

森内

村山

加藤


米長


中原

5-4
森けい二九段
中原

加藤

谷川

森内

村山

佐藤


米長

森下

3-6

コメントニュース

米長 ー谷川 米長の美学に谷川打ち勝つ!(3月3日)
勝てば名人挑戦の権利を得る谷川は、和服姿で登場。米長も和服で現れ、順位戦ではきわめて珍しい和服対決となった。
米長にとっては挑戦権も陥落も関係ない一戦ではあるが、「相手の大事な一戦に勝ってこそ運がまわってくる」と常々公言する米長にとっては、負けたくない将棋だ。
特別対局室で行われた本局は、中原ー佐藤戦と並んで行われ、上座を占めたのは谷川だった。

米長の作戦は相掛かりから3五歩を早いうちに突き捨てる中原流の急戦だった。並んで行われた二局は、途中までまったく同じ進行となった。
米長が攻め、谷川が受けに回る展開となるも、谷川が余裕をもって米長の攻めを催促する形となり、中盤では明らかに谷川優勢に! なんとか手を作っていこうとする米長に対し、谷川は丁寧に手を殺していく。終盤に入り、谷川の勝勢が明らかとなった。

今回A級順位戦の様子は衛星放送を通して、リアルタイムに流された。
「もういいですよ米長先生、ここで投了でしょう」
「あ、まだ指し続けますか、もう十分ですよ。そろそろ投了でしょう」
「あ、また指した。がんばりますね」
解説の田中寅彦九段が語るように、米長は頭金の一手前まで黙々と指し続けた。
自玉の詰みを目前にして、盤面を凝視し続ける米長の胸にはどんな思いが去来していたのだろうか。
そこに映っていたのは、最後まで勝負を諦めない一人の勝負師の姿だった。

午後11時49分、米長投了。
谷川が七年ぶりに、名人挑戦の舞台へと歩を進めることが決まった。

加藤 ー森内 重戦車のごとく、加藤手厚く勝ちきる!(3月3日)
加藤にとっては負ければ残留の目が出てくる一戦、森内にとっては谷川が最終局に敗れたときプレーオフを戦うためにも落とせない一戦、両者ともに一歩も引けない大一番となった。
先手番の加藤は定番の角換り棒銀ではなく、矢倉を選んだ。森内は急戦を望み、矢倉中飛車から中央を制圧する。加藤が長考を繰り返し、局面は中盤からなかなか進まない。加藤の磐石の厚みがなんとも頼もしい。それでいて、いざ中央で駒がぶつかり合ってみると、加藤の駒がきれいにさばけている。手厚く、手厚く、加藤らしい将棋で森内を退けた。
加藤またしても最終局を制し、自力残留を決める。

島 ー村山 村山終盤で誤る!(3月3日)
負ければ陥落の公算が高い両者の最終決戦となった。戦型は相矢倉に落ち着き、中盤まではA級順位戦8回戦の佐藤ー島戦とほぼ同じ進行に! 村山も相当研究してきたに違いない。
力任せに端を食い破った島が終盤に入っても局面をリードし、攻めがつながるか切れるかに注目が集ったが、終盤に強いはずの村山に大きなミスが飛び出した。島の玉頭に攻め込む順を放棄し、2二金と守りに回った手が悪手に! 数手後、村山の見落としていた寄せの好手を島は放った。
出だし4連敗の苦しいスタートから、島が自力残留を決め、敗れた村山はこの時点でA級陥落が確定した。

中原 ー佐藤 中原、自力残留を決める!(3月3日)
中原が予想通り相掛かりに誘った。中原流急戦の3五歩の仕掛けに対し、佐藤は新趣向を見せる。3四に歩を垂らされると、銀を1三、2四へ進め、3五の地点を守った。中原が角を放ち、一歩得をする。焦点は放たれた中原の角がさばけるか否かにかかった。しかし、2二金・1三銀の悪形を強いられた佐藤の駒組みが思うようにいかない。局面は次第に中原優勢へと傾いていく。
粘る佐藤に一時中原陣にも火がついたが、中原は無難に竜を引き寄せ火種を消していく。中原がしっかりと腰を据えて逃げきり、自力残留を決めた。

森下ー森 石田流三間飛車が穴熊を粉砕!(3月3日)
一斉に行われた最終戦のなかで、唯一降級とも名人挑戦権とも関係のない一局となった。後手番の森が石田流三間飛車に組み、森下が居飛車穴熊に構えた。6九の金を7九に寄れば穴熊が完成するのだが、森下は隙ありと見て敢然と開戦に踏み切った。しかし、森が飛車を切り穴熊城に喰らい付く絶妙のさばきを見せ、将棋は森ペースに。そのまま終始森が押し切った。久々に森に会心の笑みが広がった。

谷川ー森下 森下の研究実らず、谷川単独首位を守る!(2月5日)
挑戦権争いをかけた大一番に、谷川は十八番の角換りに出た。森下には研究に研究を重ねた秘策があった。後手棒銀から端を破り、一転して▽7一金と自陣をしめる意表の一手だった。この一手を境に森下優勢・・・かと思われたが、谷川が成銀を森下玉のそっぽを向く8三へ動かすと、森下呆然!
谷川が優勢に立った。終盤谷川に緩手が飛び出し、いっとき形勢はもつれたが、時間に追われた森下は勝ちを読みきることができなかった。
無念、森下挑戦権争いから脱落! 最終戦に谷川が勝てば、挑戦権確定! 谷川が米長に敗れ、森内が加藤に勝つと、両者のプレーオフとなる。
A級順位戦もいよいよ3月3日の最終戦を残すのみ!

森内ー中原 森内逆転で挑戦争いに残る!(2月5日)
2敗の森内としては挑戦権争いに残るためには、負けられない一戦だ。中原としても本局を落とすと降級の目が最終戦まで残ってしまう。
角換りから中原は、このところ多用している右玉の作戦に出た。馬をつくり、と金をつくった時点では、中原が優勢に・・・。しかし、攻めを焦り、形勢は一気に逆転。最後は森内に鮮やかな攻防の妙手が飛び出し、勝ちを拾った。

森ー米長 無念、森の陥落が決定!(2月5日)
こちらも残留争いの大一番。森は得意のひねり飛車に誘導し、伸び伸びと指し続けるが、中盤で優位に立ったのは米長だった。さすがにここ一番のときの米長は強い。非凡な好手を連発し、優勢を広げていく。もはや森も土俵を割るしかなかった。
森敗れて降級が確定。同時に米長は残留を決めた。

村山ー加藤 序盤戦術で村山!(2月5日)
本局に村山が負けると村山の陥落が決まり、同時に加藤の残留が決まる。村山としては意地でも負けられない一局である。
相矢倉から加藤は棒銀に出るも、すでに村山の研究範囲であったのか、序盤早々に村山が有利な態勢を築いた。激しい攻め合いとなるも、村山の優勢は動かない。そのままの流れで手勝ちを収めた。
これで村山は最終戦に勝てば自力残留が決まる。加藤は今期もまた、最終戦に残留をかけることとなった。

佐藤ー島 島が残留への執念を見せる!(2月5日)
佐藤得意の先手矢倉に、島は堂々と応えた。佐藤としては挑戦権に望みがあるだけに負けられない。一方、島としても残留か陥落かの瀬戸際であり、こちらも負けられない。両者ともに一歩も譲れない終盤戦、佐藤の動きがぴたりと止まった。佐藤に誤算があったか・・・。島が優勢にたった。佐藤も懸命に追撃するが、島が冷静に難解な寄せを読み切り勝ちきった。
佐藤3敗で挑戦争いから脱落。島は最終戦に自力残留の目を残した。

森下ー森内 一手争いの激戦!森内が残す。(1月17日)
1敗の森下と2敗の森内がぶつかり、優勝の行方を占う大一番となった。矢倉から両者ともに一歩も引かない激しい攻め合いとなった。その流れは終盤に入っても変わらず、森下のと金攻めに森内は手抜きで攻めを続行する。気迫が森下を誤らせたのか、感想戦でも詰めがはっきりしない変化を含む難解な局面へと進んで行く。一手争いの終盤戦、わずかに残していたのは森内だった。
これで、7回戦が終了。森下が敗れたため、谷川が6勝1敗で単独首位に躍り出た。そのあとを、5勝2敗で森内・森下・佐藤が追っている。

森ー島 攻め急ぎで森が自滅!(1月17日)
森の振飛車に島は居飛穴を目指すも急戦を仕掛けられ、香が上がったままの薄い陣形での戦いを余儀なくされた。中盤では島の駒損が大きく、早くも森優勢に! 自陣に金を打ち、飛車の打ち込みを消しておけば森に負けはない形だったが攻め急ぎ、島に付け入る隙を与えてしまった。以下森は疑問手を連発し逆転。島は残留に大きく近づいた。

谷川ー加藤 冴える!谷川の先手四間飛車!(1月14日)
谷川の作戦は、加藤の意表をつく先手四間飛車だった。加藤は居飛穴を目指すが、谷川が急戦を仕掛けたため、米長玉に構える。谷川は左銀を右翼に進出させ、ポイントを稼ぐ。銀交換後の打ち込みの直後、加藤に受けを誤る敗着が出た。以下、谷川が一気に寄せて快勝。森下を半歩リードした。

村山ー中原 中原の右玉に村山精彩なし(1月14日)
村山が角換りを目指すと、中原は角道を止め、このところ多用している右玉に構える。局面の打開を図った村山が攻めに出るも、きつい反撃を浴び撃沈! 村山の不調を表す一局となった。

米長ー佐藤 意表の角打ち! 佐藤が2敗を守る!(1月10日)
相矢倉からの中盤戦、佐藤の放った米長の読み筋を外す意表の角打ちが功を奏した。後手の佐藤が3七にと金をつくり、米長が銀桂を中央に進出させれば、まだ難解な場面と思われたが、ぼんやり飛車取りに打った2九角が好手で局面は佐藤有利に! 終盤は攻め急がずがっちり守って勝利を確実にした。

加藤ー米長 中原流5一金戦法を撃破! 加藤が3勝目をあげる!(12月10日)
ベテランの両雄の一戦は、米長が横歩取りに誘い、中原流5一金戦法に構えた。長考を繰り返した加藤は猛然と仕掛け、少しづつポイントを稼いでいく。中盤ですでに加藤の残り時間は30分となったが、形勢は十分。筋に入った攻めをつなぎ、そのまま快勝した。
これで6回戦が終了。首位に5勝1敗で森下・谷川、そのあとを4勝2敗で森内・佐藤、3勝3敗で加藤が追う展開となっている。

島ー森下 息詰まる終盤戦、島が勝ちを逃す!(12月6日)
相矢倉から一手争いの終盤戦に入り、森下がややリードを保っていた。しかし、森下らしく堅く受ければ勝ちが見える局面で、森下はあえて危険な順に踏み込み逆転! 島に勝ち筋があったが、島もこの順を逃し、最後に笑ったのは森下だった。森下にはまだ運が残っている。谷川と並び、1敗で首位を守る!

佐藤ー森 森の猛攻をしのぎ、佐藤のA級残留がほぼ確定!(12月6日)
一進一退の激しい中終盤戦が繰り広げられた。攻めを催促された森が、飛角を切っての猛攻を見せると、佐藤が丁寧に受け止める。その間、じわじわと穴熊を攻略。森が攻防に放った飛車打ちをとがめ、寄せ切った。感想戦でも、どうやっても佐藤が残っていたようだ。

森内ー村山 空中戦を制し、森内2敗を守る!(12月3日)
横歩取り3三角の空中戦は、村山の緩手をとがめた森内が一気に寄せ切った。村山の緩手は、精読した急所の一手を自信がもてないと断念しての着手だった。王将リーグ優勝を目前に、村山不調!

中原ー谷川 四間飛車で谷川完勝! 名人挑戦権に向け走る!(12月2日)
後手番の谷川は四間飛車に構え、中原が急戦を仕掛ける展開に! 谷川が終始中原を圧倒した。中盤、飛車を抑え込まれながらも、振飛車らしいさばきで銀と角をさばき、終盤の競り合いに突入。互角で終盤に入れば、絶対落とさないという勢いが今の谷川にはある。抑え込まれていた飛車を活用しての華麗な寄せが、盤上を飾った。谷川が半歩抜け出し、首位独走!

加藤ー佐藤 入念な研究の成果か! 加藤の角換り棒銀敗れる!(11月21日)
加藤得意の角換り棒銀は、定跡通りの進行となった。加藤は馬を作り後手の左翼を制圧すれば、佐藤はと金を軸に先手の右翼を制圧する。両者ともに自信のある局面だったようだが、佐藤の研究は加藤のそれを上回っていた。最後は3八のと金が7八まで遠征し、危なげなく勝ちを収めた。

森ー村山 角損の猛攻に森ギブアップ!(11月15日)
空中戦から森は角をただで生け捕り、その間に村山はと金を作って反撃する。大局観が問われる局面だったが、局後の検討ではすでに村山有利! 両取りや切り返しが派手に盤上に飛び交い、村山が勝ち名乗りを上げた。

谷川ー森内 右四間からの大さばき、谷川がトップに並ぶ!(11月12日)
谷川得意の飛車先不突きの角換りに誘うと、森内は角交換に応じず相腰掛銀のままにらみ合う。谷川は右四間から全軍をすすめ、大さばきに出た。森内はこれを好機ととらえ反撃に転じるも、攻めを誤り谷川優勢に! 終わってみれば、谷川完勝!

森下ー中原 森下が受けて勝つ!(11月5日)
森下が矢倉を目指すと、中原は右玉の作戦に出た。中盤の端歩つきが緩手となり、中原が苦戦。角交換後の打ち込みに楽しみを残したが、何げなく寄った森下の金が、まるでマジックのようにすべての隙を消していた。森下らしい手厚い受けが、勝ちを磐石のものとし、トップで折り返した。
この1勝で森下は、現役棋士20人目の通算500勝をあげた。通算成績は500勝243敗。

米長対島 島が残留への執念を見せる!(11月1日)
米長の初手▲7六歩に島は▽3二金、ケンカ将棋を米長に叩きつけた。米長の性格からしたら当然ここは、3二金をとがめて振飛車にいく一手。5筋位取り中飛車で銀をどんどん繰り出していく。が、島の術中に陥り、一方的に押し切られた。中盤で出た銀を引き、じっくり指していれば、米長の作戦勝ちだったことは誰の目にも明らかだったが、勝負師の意地は銀の前進にこだわった。「一度出た銀を下がるのは指しづらい」と米長。米長らしい敗局となった。

中原対加藤 加藤が鮮やかな指し回しで快勝!(10月15日)
加藤は早々と4四歩と止め、空中戦を拒否。中原のひねり飛車に対し、馬をつくり優位に局面を進める。終盤加藤が攻めを急ぎ、もつれたかと思われたが、最後は華麗に寄せ切った。

これでA級順位戦4回戦が終了。全勝者はなく、3勝1敗で森内・森下・谷川がトップに並んでいる。薄氷の戦いがまだまだ続きそうだ。

村山対佐藤 空中戦は桂を封じた佐藤が残る!(10月4日)
竜王戦挑戦者決定戦第一局の対谷川戦と、まったく同じ将棋に! 佐藤は谷川戦での敗着となった3一歩の代わりに、2三銀と立つ。結果は佐藤勝ち。

谷川対島 力将棋は谷川に軍配!(10月4日)
▲7六歩▽8四歩▲6八銀▽3四歩▲7七角、このところ谷川がよく採用する手将棋で将棋は進む。島の仕掛けを満を持して待ち、鮮やかに反撃! 横綱将棋?を見せる。島は不調の4連敗。

森内対森 時間攻めも効なし、森内快勝!(10月3日)
森の四間飛車に森内の居飛車穴熊。森は穴熊の完成を見届けてから悠然と仕掛け、森内が受け間違えたことで好機を手にするも、策におぼれ失着をおかす。消費時間に2時間あまりの差をつけ、終盤に余力を残したことが敗因か?

光るいぶし銀、森下が一歩抜けきる!(9月26日)
米長は、三日前に羽生を下したときと同じ右玉戦法を採用。激しい攻めを見せたが、森下が取ったばかりの銀を自陣に打ちおろし堅陣を築くと、攻め足が見事に封じられた。森下らしい勝ち方だった。

米長健在、村山を破る!(9月10日)
相矢倉から後手番の村山が開戦。売られた喧嘩をかった米長が、細い攻めをつなぐ名人芸をみせ、村山を破った。これで3回戦が終了。全勝が消え、6人が2勝1敗で並んだ。

谷川が森の連勝をストップ!(9月9日)
森がひねり飛車に誘導すると、谷川はわざとタテ歩を取らせて、これを拒否。終盤も冴え、光速の寄せで森を下した。

島が3連敗!(9月6日)
高柳一門の兄弟対決は、粘って中原がものにした。中原の角換り棒銀に島が必勝態勢を築くも、中原は入玉を目指し、泥試合に。島が息絶えた。

佐藤、手痛い敗北!(8月26日)
注目の佐藤・森内戦は力将棋のねじり合いとなり、勝利の女神は最後まで耐え抜いた森内に微笑んだ。これで混戦は必至!

2回戦を終えて(8月10日)
2回戦最終局森内・島戦は、先手矢倉の特権を活かし森内が手堅い勝ちを収める!
これで連勝は森九段ただ一人!


棋界情報NOW!にもどる