第22期棋王戦



羽生棋王対森下八段のタイトル戦5番勝負が終了した。
羽生棋王が三連勝でストレート防衛に成功した。

棋王戦5番勝負

 1  2  3  4  5 
羽生善治棋王 ○  ○  ○     
森下 卓八段 ●  ●  ●     

棋王戦5番勝負第1局

助からないと思っても助かっている!
強靭な精神力、羽生先勝!

棋王戦第1局 2月8日

熊本県玉名市「白鷺荘別館」にて
先手:羽生善治棋王  対  後手:森下 卓八段

戦型:相矢倉
結果:135手で羽生辛勝!
残り時間:羽生 1分
     森下 1分

相矢倉から羽生は自陣を穴熊模様に組み替え、
力をためて▲3五歩から森下陣を切り崩しにかかった。
一歩の補充のために▲1五歩を入れ、攻めの継続を計ったとき、
森下に絶妙手が飛び出した。
ただでさえ先手は1五香と走りたい局面であるにもかかわらず、
▽1六歩と突き出したのが、プロ棋士を感動させる名手となった。
この一手で先手の1三歩からの攻め筋が消え、
先手の攻め足が見事に止まっている。
「まさか・・・」羽生がうなった。

しかし、羽生も黙って引き下がりはしない。
▲5七角から強引に攻めをつなぎ、馬を攻防に利かせて
一手違いの終盤戦に持ち込んだ。
森下は▽3五銀の受けの妙手を出し、
受けに利いていた羽生の飛車を誘い出す。
この時点で森下玉には必至がかかっている。
羽生玉が詰むや詰まざるやに、勝負が預けられた。

プロなら一目、詰んでいると直感する局面である。
このときの森下の残り時間は8分、
意を決して森下は、王手を連発した。
羽生はひたすら逃げる。退路を決して間違えはしない。
森下は詰んでいると思っていた。羽生はわからないと思っていた。
それから28手が進んだ。
森下が深々と頭を下げた。

なお第1局の棋譜は熊本新聞により公開されている。

棋王戦5番勝負第2局

森下またも逆転を喫する!
羽生マジック健在、2連勝!

棋王戦第2局 2月20日

静岡県浜松市「呉竹荘」にて
先手:森下 卓八段  対  後手:羽生善治棋王

戦型:相矢倉
結果:180手で羽生逆転勝利!
残り時間:羽生 1分
     森下 1分

前局に引き続いての相矢倉となった。
先手矢倉はやはり有利なのか、中盤では明らかに森下が作戦勝ちを収めていた。
不利と見た羽生は、自ら危地に飛び込む。
銀の割り打ちが見えているにもかかわらず、▽4一飛と回り活路を求めた。
森下は銀交換から当然のごとく、▲5二銀の割りうちを見せる。
ここまで森下優勢。終局も早いのではいかとささやかれていた。

飛車と金の両取りをかけられた羽生は、▽2三銀から森下の飛車をいじめにかかる。
一気に決めるか、安全に行くか、森下は選択を迫られる。
安全策を取り飛車を逃げたところ、盲点を突く羽生の一手が飛び出した。
両取りも森下の飛車を殺す順も放置して▽3七角成と、
ぼんやり森下陣に駒を進めた手が好手!
「こんな手があるのなら、もっと急ぐ必要があった」(森下)

局面は一気に紛れた。飛車を取ったものの森下陣にもたちまち火がついてしまった。
形勢は互角に戻された。
森下は粘りに出る。自陣を補強して徹底抗戦に出る。
両者1分将棋に突入した。
形勢は一手ごとに有利不利が別れてゆく。
午後8時7分、180手の激闘を制したのはまたも羽生だった。

棋王戦5番勝負第3局

森下、時間に泣く!
またも大逆転、羽生三連勝で防衛!

棋王戦第3局 3月7日

新潟県新潟市「イタリア軒」にて
先手:羽生善治棋王  対  後手:森下 卓八段

戦型:相矢倉
結果:117手で羽生逆転勝利!
残り時間:羽生 2分
     森下 1分

三たびの相矢倉となった。
4六銀・3三桂から5八飛と回る流行型に羽生が組むと、
森下はかねてから決めていたという▽4五歩から開戦に踏み切った。
森下は馬を作ったものの、4五の地点に攻めの足場を築かれたのちに
▲4四銀と打ち込まれ、容易でない局面を迎える。

森下は長考ののち▽7三桂とはね、羽生の読み筋をそらした。
ここからの羽生の構想は非凡だった。
金を自陣に打ち、森下の馬をあえて好所に追いやり、
その代償に飛車を敵陣へ成り込むことに求めた。
その瞬間、羽生の攻めがとぎれた間隙を縫い、
森下が▽8六歩から羽生の玉頭に襲いかかった。

玉を吊上げ、▽9五銀と打ち込み、森下優勢に!
しかし、ここまでに時間を多く消費した森下は、すでに残り25分。
羽生との残り時間の差が明暗を分けることになる。

87手目、▽7八銀成が疑問手に!
▽7八銀成らずで、後手は攻め手に困ることなく、明快な勝ち筋に入っていた。
その後も勝ち筋が森下に残っていたが、
時間切迫による錯覚が、森下の悪手を指そう。
結局羽生玉は広い上部に無事脱出し、森下の勝ち筋は消えてしまった。

必勝形から、森下はまたも逆転負けを喫した。
森下屈辱の三連敗で、羽生が棋王位防衛を決めた。

本戦トーナメント戦

村山 聖八段━━━━━━━━━━━━━┓
                   ┃
桐山清澄九段━━━┓         ┣━神谷━┓
         ┣━桐山━┓    ┃    ┃
富岡英作七段━━━┛    ┣━神谷━┛    ┃
              ┃         ┃
神谷広志六段━━━━━━━━┛         ┃
                        ┣━小林━┓
福崎文吾八段━━━━━━━━┓         ┃    ┃
              ┣━小林━┓    ┃    ┃
小林健二八段━━━━━━━━┛    ┃    ┃    ┃
                   ┣━小林━┛    ┃
阿倍 隆六段━━━━━━━━┓    ┃         ┃
              ┣━有吉━┛         ┃
有吉道夫九段━━━━━━━━┛              ┃
                            A┣━小林━┓
森内俊之八段━━━━━━━━┓              ┃    ┃
              ┣━森内━┓         ┃    ┃
塚田泰明八段━━━━━━━━┛    ┃         ┃    ┃
                   ┣━森内━┓    ┃    ┃
高田尚平五段━━━━━━━━┓    ┃    ┃    ┃    ┃
              ┣━加藤━┛    ┃    ┃    ┃
加藤一二三九段━━━━━━━┛         ┃    ┃    ┃
                        ┣━森内━┛    ┃
丸山忠久六段━━━━━━━━┓         ┃         ┃
              ┃         ┃         ┃
中村 修八段━━━┓    ┣━中村━┓    ┃         ┃
         ┣━中村━┛    ┃    ┃         ┃
田丸 昇八段━━━┛         ┣━島 ━┛         ┃
                   ┃              ┃
島  朗八段━━━━━━━━━━━━━┛              ┃
                                 C┣━森下━┓
米長邦雄九段━━━━━━━━━━━━━┓              ┃    ┃
                   ┃              ┃    ┃
郷田真隆六段━━━┓         ┣━郷田━┓         ┃    ┃
         ┣━郷田━━━━━━┛    ┃         ┃    ┃
田中寅彦九段━━━┛              ┃         ┃    ┃
                        ┣━森下━┓    ┃    ┃
佐藤康光八段━━━━━━━━┓         ┃    ┃    ┃    ┃
              ┣━久保━┓    ┃    ┃    ┃    ┃
久保利明五段━━━━━━━━┛    ┃    ┃    ┃    ┃    ┃
                   ┣━森下━┛    ┃    ┃    ┃
森下 卓八段━━━━━━━━┓    ┃         ┃    ┃    ┃
              ┣━森下━┛         ┃    ┃    ┃
森けい二九段━━━━━━━━┛              ┃    ┃    ┃
                            B┣━森下━┛    ┃
中原誠永世十段━━━━━━━┓              ┃         ┃
              ┣━中原━┓         ┃         ┃
行方尚史五段━━━━━━━━┛    ┃         ┃         ┃
                   ┣━中原━┓    ┃         ┃
青野照市九段━━━━━━━━┓    ┃    ┃    ┃         ┃
              ┣━青野━┛    ┃    ┃         ┣━森下=挑戦者決定!
谷川浩司九段━━━━━━━━┛         ┃    ┃         ┃
                        ┣━中原━┛         ┃
井上慶太七段━━━━━━━━┓         ┃              ┃
              ┃         ┃              ┃
南 芳一九段━━━┓    ┣━ 南━┓    ┃              ┃
         ┣━ 南━┛    ┃    ┃              ┃
内藤国雄九段━━━┛         ┣━高橋━┛              ┃
                   ┃                   ┃
高橋道雄九段━━━━━━━━━━━━━┛                   ┃
                                       ┃
                          森内━┓         ┃
                             ┣━中原━┓    ┃
                          中原━┛    ┃    ┃
                                  ┣━中原━┛
                               小林━┛

上記トーナメント表中ABCは、ベスト4以上に進んだ敗者による復活戦を表わす。
挑戦者決定戦は、勝者組からの勝ち上がり者と敗者組からの勝ち上がり者とで行われる。
ただし、敗者組勝ち上がり者が挑戦者になるためには、2連勝が条件となる。
勝者組勝ち上がり者は一回勝つだけでよい。

コメントニュース

挑戦者決定戦=中原ー森下 受けの妙手で森下逆転勝利!(1月10日)
先手の中原が相掛かりに誘った。中原は研究に研究を重ねたという順に森下を誘い込み、銀損ながら二枚飛車で森下陣を荒らし優勢に立った。ところがあまりの優勢に楽観したのか、飛車を切り勝ちに行ったところを、森下が受けの妙手で待ち構えていた。銀をそっぽに逃げるという中原が見落としていた妙手だった。この一手を境に逆転。挑戦権は2年ぶりに森下が獲得した!

小林ー中原=敗者組み決勝 中原、耐えて勝つ!(12月27日)
小林の振飛車穴熊に中原は銀冠から玉頭に位を張って対抗した。局面は5筋にと金をつくった小林有利に展開するも、中原が粘りなかなか決め手を与えない。紛れに紛れた終盤、寄せの決め手を放ったのは中原だった。 これで敗者組みからは中原が勝ち上がり、挑戦権を賭け、森下とぶつかることになった。

森下得意の受け潰し! 中原を相掛かりで破る!(11月18日)
中原得意の相掛かりを受けて立った森下は、急所を受けてしのぎ、厚みを活かして中原の角をしっかり抑え込む。攻めが途絶えた中原陣を、じっくりと攻略し、勝者組み決勝へと進んだ。

スーパー四間穴熊が、森内を沈める!(11月15日)
穴熊対左美濃の戦いは、3筋に飛車を転用し、森内の玉頭に襲いかかった小林が、そのまま押し切った。森内粘るも届かず。勝者組みと敗者組みへと明暗を分けた。

中原、空中戦で高橋を破る!(11月2日)
平成4年度の名人戦を思い出させる中原ー高橋の空中戦は、後手番の中原が右桂を跳ねる強攻をみせ優勢に。高橋懸命の粘りも追いつかず、連続挑戦の夢はついえた。

森下が4強一番乗り!(10月3日)
相矢倉の一戦は、郷田が森下のお株を奪う手厚い指し手を見せるも、森下が勝負形に持ち込み辛勝!

振飛車党小林も8強入り!(9月16日)
小林の三間飛車穴熊に、有吉は居飛車穴熊で対抗。143手の死闘は小林が制した。

森内が順当に勝ち進む!(9月13日)
加藤の18番角換り棒銀を、森内が攻めつぶし、ベスト8入りを果たす。

郷田ベスト8に名乗り!(8月26日)
米長のひねり飛車に対し郷田が猛攻をみせ、80手で 大豪を下した。
次は森下と4強をかけて争う。


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