第56期A級順位戦

[ 第55期A級順位戦 ]



名人挑戦者1名。降級2名。

      

順位棋士名123456789勝敗
1羽生善治四冠王
森内

佐藤

井上

森下

加藤


米長

高橋
 
中原

5-2
2森内俊之八段
羽生

中原

森下

佐藤

米長

加藤

井上
 
 
高橋

3-4
3 森下 卓八段
米長

高橋

森内

羽生

井上

中原

 
加藤

佐藤

5-2
4 佐藤康光八段

羽生

米長

森内

高橋

井上

加藤

中原
 
森下

4-3
5島  朗八段
佐藤

米長

高橋

加藤

中原

羽生

森下
 
森内

井上

4-3
6 中原誠永世十段
井上

森内

加藤

米長


森下

高橋
 
佐藤

羽生

4-3
7加藤一二三九段
高橋

井上

中原


羽生

森内

佐藤

森下
 
米長

3-4
8米長邦雄九段
森下


佐藤

中原

森内

高橋

羽生
 
井上

加藤

3-4
9高橋道雄九段
加藤

森下


井上

佐藤

米長

中原
 
羽生

森内

1-6
10井上慶太八段
中原

加藤

羽生

高橋

森下

佐藤

森内

米長
 

3-4

コメントニュース

中原 ー高橋 中原の桂に、高橋A級陥落!(1月16日)
相掛りから中原が激しい変化を匂わせ、高橋を翻弄する。玉形を厚く構えようとする高橋陣に、中原は左右の桂を端にはね、決戦に持ち込んだ。しかし中原に自陣角の緩手が出ると、高橋が盛り返し、形勢は微妙となる。高橋に印篭を渡したのは、またしても中原の桂だった。角取りにぼんやり打った桂が、高橋陣を崩壊に導く。高橋が静かに頭を下げ、投了を告げた。 高橋、一期でA級陥落。対局場が静まり返った。
佐藤 ー加藤 作戦負けで加藤じり貧に陥る!(1月16日)
残留を確定させるためにも、両者ともに勝ちたい一戦だ。米長同様、佐藤もまた和服で対局場に現れた。相矢倉の戦いは、佐藤が銀を盛り上げ左翼を制圧し、伸び伸びとした陣形を築いた。加藤が攻めの要となる桂の道を止める▽8五歩を着手すると、その一手をとがめ、佐藤が一気に優勢に立った。そのあとは緻密な佐藤らしい寄り切りをみせ、加藤に付け入る隙を与えなかった。佐藤は4勝目をあげた。加藤はまたも3勝のまま足踏みをし、これ以上は負けられない苦しい崖っぷちに立たされた。
米長 ー羽生 米長、気迫で読み勝つ!(1月14日)
もう負けられない米長は和服姿で対局場に現れた。大一番の雰囲気が早くも対局場を包み込む。相矢倉の駒組が飽和点に達すると、長考が繰り返された。夜に入り、局面は駒得をしている羽生に傾きはじめていた。控え室の検討でも先手にうまい攻めがなく、米長が苦しいと思われていたが、米長はさらに駒損覚悟で羽生玉に迫っていった。気迫だけが妖しくゆらめく。気がついてみれば、米長の勝負師としての気迫が将棋の流れを変えていた。形勢互角で突入した難解な終盤、米長の読みが羽生を上回った。きっちり一手を余し、米長が勝利をつかんだ。
米長3勝目、陥落の危地をひとまず脱し、羽生の独走を阻んだ。
島 ー森下 森下、見落としでバッタリ!(1月9日)
半歩リードしても、すぐに羽生にピタリと追いつかれるだけに、森下としても焦りがあったのだろうか。本局の森下は精彩を欠いた。9筋から攻めかかり、後手番ながら激しい攻めを見せた森下だったが、島の銀出を見落とし、たちまち不利に陥る。島に多くの歩を渡したことをうっかりしての見落としだったようだ。最終盤、島が鮮やかな飛車きりを見せ、森下を投了に追い込んだ。森下2敗目、挑戦者争いから無念の後退となった。
森内 ー井上 井上の弱気の一手を見逃さず、森内3勝目!(1月9日)
順位が上とはいえまだ2勝の森内には降級の可能性が残っているだけに、負けられない一戦だ。一方3勝をあげている井上にしても順位では最下位だけに、残留の目はまだ出ていない。相矢倉の中盤戦、井上は慎重に事を運ぼうと大長考の末に、局面を押さえるべき一手を指す。ところがこれが緩手となり、以後森内の攻めが途切れることなく続き、形勢を損ねた。終盤も森内が落ち着いて寄せ切り、貫禄勝ちを収めた。
羽生 ー島 羽生が一方的に攻め潰す!(12月19日)
森下が1敗を守り先行しているだけに、羽生としても負けられない一戦だ。相矢倉からはじまった本局は、予想に反し、一方的な流れとなった。敗因は何げなく受けに打った島の▽4四歩だった。一見普通の手に見えたのだが、ここからの羽生の攻撃がすさまじかった。島に反撃の暇を与えず次々と攻めかかり、矢倉城を崩壊させた。対する羽生城はまったく手つかず。島としては悔しい敗戦となった。これで羽生は5勝1敗、森下とともに首位を守った。
加藤 ー森内 加藤の対振飛車棒銀を森内が狙い撃ち!(12月18日)
森内は迷わず四間飛車に構えた。対振飛車には棒銀を信条とする加藤も迷わず急戦棒銀に出る。新趣向を凝らしたのは加藤だった。序盤で作戦負けに陥る順を回避し、難解な中盤戦に持ち込む。しかし、せっかく作った馬を手順に角と交換させられ、形勢が傾いた。最終盤、加藤は早々に1分将棋に入ったが、森内は時間をたっぷり残し慎重に読みを入れる。残留に向けて大きな1勝を手中にした。
森下 ー中原 森下らしい手厚い将棋で首位守る!(12月12日)
羽生と並び首位を走る森下と、まだ挑戦者争いに目を残す中原との対戦となった。中原が陽動振り飛車から手将棋に誘導すると、森下は対振り飛車の十八番銀冠で対抗。中盤以降は徹底した玉頭戦が展開された。持ち味を十分に発揮したのは森下だった。自陣からの合せ歩で駒不足を補いつつ、手堅く攻めをつないでいく。最後は手順に金銀を玉に近づけ、手厚く中原を退けた。
森下は5勝目をあげ、羽生を半歩リード! 中原は3敗目を喫し、挑戦者争いから脱落した。
井上 ー佐藤 激闘、井上が最後に勝機を逃す!(12月11日)
相矢倉から佐藤は銀冠にかまえ、ともに仕掛けのときを待ちながら夕食休憩に入った。先に仕掛けたのは、井上。両者一歩も譲らぬ大さばきとなり、井上が指しやすい変化となった。しかし、佐藤も必死に食らいつき、形成互角でもつれた終盤戦、佐藤に緩手が出た。一瞬訪れた勝機だったが、時間に追われる井上は、寄せを誤り投了。佐藤と井上はともに3勝3敗で並んだ。
高橋 ー米長 高橋、残留戦線に踏み止まる!(12月9日)
ここまで高橋は5連敗、米長も2勝3敗と、苦しい星同士の対戦となった。矢倉を目指した高橋に対し、米長は右玉に変化。力将棋となった。中盤、米長がわざと隙をつくり高橋に攻めさせようとしたが、高橋は攻め急がずに自玉をがっちり固めてから攻略にとりかかった。この間合いを計った構想が功を奏し、終始高橋が玉の堅さを活かして勝ち切った。高橋は残留への望みをわずかにつないだ。米長は4敗目を喫し、残留に黄色信号がともった。
佐藤 ー高橋 高橋、寄せを誤り5連敗!(11月20日)
がっぷり四つの相矢倉となった。両者慎重に駒組みを続け、なかなか争いがおこらない。夕食休憩後先手番の佐藤が打って出ると、高橋は丁寧に受けに回った。優勢に立ったのは高橋。佐藤の攻めを見事に切らした。攻守ところを変え、今度は高橋の反撃がはじまった。佐藤は玉側の端歩を悠然と突き、寄せられたら仕方ないと開き直る。高橋が攻め、佐藤が守る。頑強な佐藤の粘りに手を焼いたのか、高橋が寄せを誤った。形勢逆転! 優勢な将棋を落とし、高橋5連敗! 降級がちらつく。

米長 ー森内 急戦矢倉を潰し、米長が残留に大きな一歩!(11月17日)
ここまで両者共に1勝3敗という苦しい星同士の対戦となった。相矢倉から後手番の森内が5筋の歩を交換し、急戦矢倉の意志をあらわにすると、米長は森内の攻め駒に牙をむき襲いかかった。守りの銀桂までが前線に進出する型破りな迫力は、米長将棋ならでは! 米長の仕掛けが成功した。やむなく森内は攻め合いを放棄し、取れる金を取らずに一転渋い受けに出た。順位戦ならではの粘りだ。しかし米長はひるむことなく強気の攻めを続け、最後は鮮やかに寄せ切った。米長快勝! 残留への大きな一歩となった。

加藤 ー羽生 華麗なさばきで羽生がトップに並ぶ!(11月13日)
後手番羽生の四間飛車に対し、加藤は言わずと知れた急戦棒銀! 中盤に入り、羽生が駒得の戦果を収めたものの、中段に踊り出た金が遊んだまま働いておらず、見た目ほど形勢に開きはなかった。しかし、加藤の緩手を巧みにとらえ、羽生は遊んでいる金を加藤陣の守りのかなめの銀と交換し、優勢をグンと引きつけた。その後も振飛車の手本となるような大さばきを見せ、文字通りの快勝を遂げた。羽生、4勝1敗、森下とともに首位に並んだ。

森内 ー佐藤 死闘、詰めろ逃れの詰めろ合戦!(10月29日)
思いのほか星が伸びない二人の対決となった。矢倉戦から佐藤が向かい飛車に振る趣向を見せ、飛車先を逆襲して主導権を握った。その後、森内に疑問手が出て一度は差が広まったものの、ここまで3連敗の森内の執拗な粘り腰が功を奏し、優越不明のまま終盤戦を迎えた。両者共に1分将棋となり、千日手含みの同一局面が繰り返されたが、ここでは双方ともに勝ちを意識し、最後の確認をしていたとのこと。佐藤の放った一手は一見詰めろ逃れの詰めろ、対する森内も即座に詰めろで切り返す。佐藤としては詰ます意外に道はなかったが、捨て合いの絶妙手を森内は用意していた。わずかに残し、森内が貴重な1勝をあげた。

中原 ー米長 妙技、中原の桂が決まる!(10月24日)
予想通り、先手番の中原が相掛かりに誘導した。3七銀から中原が動くと序盤早々に角交換となった。ともに角を打ち合い、どちらの角がより働くかを競う展開となった。主導権を握ったのは中原。米長が猛追するも、終盤中原に絶妙手が飛び出す。ただ取れる角をとらずに、あえて角銀交換をすることで桂の打ち場所をつくったのが非凡な一手となった。以後は中原の桂が盤上を勇躍し、米長を完封に追い込んだ。

羽生 ー森下 攻めは続かず、羽生が凌ぎきる!(10月14日)
相矢倉の展開で両者の息がピッタリ一致した。後手番の森下が棒銀に出ると、羽生はこれを受け切る作戦に出た。攻める森下、凌ぐ羽生、図式は明快だが極めて難解な中終盤戦が続いた。一つ間違えれば、どちらも即負けに到る神経戦が繰り広げられる。最終盤、わずかに余していたのは羽生だった。棋王戦以来の流れが、本局にもそのまま投影されたのだろうか。森下の全勝が途切れた。

高橋 ー井上 振飛車穴熊に高橋まさかの4連敗!(10月3日)
今期A級に昇級した二人の対決となった。居飛車党の井上が珍しく四間飛車に振り、ひたすら穴熊を目指す。高橋は銀冠に構え、穴熊に負けぬ堅陣を築こうとしていた。先に仕掛けたのは井上。攻めながら馬を自陣にきかす十分の形勢を築いた。その後龍を自陣に引きつけ磐石の構えで総攻撃に移り、そのまま押し切った。高橋に元気なく、4連敗! 苦しいスタートだ。

米長 ー佐藤 切れなかった攻め、妙手の香打ちで佐藤が初勝利!(9月30日)
佐藤は和服姿で現われた。ここまで2連敗、負けられない一戦だ。佐藤は横歩を取らせ、3三角の流行型に組んだ。ポイントを稼いだのは米長! 佐藤を低い陣形に抑え込み、攻め急ぎを誘う。攻めていくしかなくなった佐藤だが、切れてると思われた攻めを継続する盲点の香打ちがあった。この一手を境に形勢は佐藤に傾く。絶妙な寄せの一手も飛び出し、佐藤快勝!

森下 ー森内 順位戦ならでは、253手の死闘! 森下が加藤に並ぶ!(9月17日)
相矢倉から両者ともに腰の重い展開となった。双方ともに玉を上部に逃がすねじり合いとなってからが、死闘の始まりだった。ともに秒読みになってから、延々と指し手が続く。ピンチを迎えたのは森下だった。打開不可能と思われた局面から大胆な駒捨てを行い、玉の逃げ道を切り開いていく。なおも気力と気力がぶつかり合う、神経戦が続く。二転三転、優劣は入れ替わる。午前2時51分、253手目が指された直後、森内頭を下げた。

加藤 ー中原 豪快な一手で加藤快勝! ついに単独トップに!(9月12日)
中原が横歩取りに誘う展開となった。中原は得意の4一金戦法ではなく、中住まいからの最新流行型に構え、独自の構想を披露した。しかし、中盤に入り加藤がポイントを稼ぎ、馬を作って指しやすい形勢を築きあげる。見せ場は中原が飛車取りに歩を伸ばしたときに訪れた。加藤の次の一手は香の効き筋に飛車を捨てる意表の一手! 不意を突かれた中原もこれに控室の検討にない一手で応えるも、加藤の重厚な切り返しの前にあえなく撃沈! 終わってみれば加藤の会心譜だった。無傷の3連勝で、加藤が首位に立った。

高橋 ー森下 じっと我慢で森下逆転!(7月18日)
高橋の矢倉に対し、森下は全日プロ決勝で谷川に苦しめられた急戦棒銀を採用。だが中盤に入り痛恨の見落としがあり、局面は一気に高橋有利へと傾いた。森下は自らの飛車先に歩を打って止めるという泣きたくなるような我慢を続ける。高橋優勢は疑いようがないのだが、森下は粘りなかなか決め手を与えない。そうこうするうちに局面は次第にもつれてきた。結局高橋は攻め急ぎの悪手を重ね自滅、最後まで粘った森下に凱歌はあがった。

井上 ー加藤 一人千日手で逆転!(7月16日)
重厚な相矢倉となった一戦は、井上が作戦勝ちを収め、厚みで加藤陣を圧倒する。動く手のなくなった加藤は、▽2四銀〜3三銀を繰り返すのみ。井上が着々と好形を築きいざ開戦となったのだが、加藤の狙いすました反撃が決まり、局面は急きょもつれはじめる。焦った井上に攻め急ぎの一手が飛び出て、将棋は逆転。加藤が重戦車のような重厚な攻めを見せ、寄せ切った。最年長加藤が好調の2連勝!

羽生 ー森内 羽生らしい大逆転劇で再スタート!(7月4日)
名人の座を追われた羽生は本局が開幕戦。角換りから早繰り銀へと積極的な戦法を採用した。双方ともに玉を囲う余裕のない激しい中盤戦となり、優越は依然不明のままだったが、次第に森内陣が羽生陣を押し込める形となり、森内優勢へと控室の声はなびいていった。ところが今日の羽生には七冠達成当時の目に見えない勢いがあった。羽生の妖しげな手に、森内はふらふらと魅せられ、疑問手を連発する。気づいたときには羽生の大逆転勝利が見事に決まっていた。

森下 ー米長 米長の陽動振飛車実らず!(6月27日)
森下が当然のごとく矢倉に誘うと、米長は陽動振飛車に構えた。両者ともに慎重な駒組みを続け、森下は穴熊に潜り米長の仕掛けをじっと待つ作戦に出た。米長は気合いよく打って出た。森下の反撃が厳しく、米長がやや指しにくいかと思われたが、米長は自陣に金を打ちつける泥沼流を見せ、容易に腰を割らない。一進一退の終盤戦に突入した。明暗を分けたのは森下が自陣に打ち下ろした金だった。穴熊常套手段の金打ちにより、終盤の速度競争は森下が制した。

島 ー佐藤 島怒涛の攻めで快勝!(6月16日)
相矢倉から後手番の佐藤が棒銀に出た。島は厚みを活かして棒銀を受け止め、1五桂から巧妙な攻め手順を見せ、主導権を握った。攻め続ける島に対し、佐藤はなかなか決め手を与えず執念の受けを見せるも、結局は一方的に寄せ切られた。

加藤 ー高橋 矢倉城は落ちず、加藤が守り勝つ!(6月13日)
A級復帰を果たした高橋は加藤にがっぷり四つの相矢倉戦を挑んだ。後手番ながら積極的に仕掛け、主導権を握っていたものの、加藤の守備は巧みだった。「どこが悪かったんだろう」と高橋が首をひねる間に、加藤は反撃にうつり優勢を確立。そのまま押し切り、1勝を上げた。

中原 ー井上 新鋭井上、大豪を破る!(6月11日)
中原が得意の相掛かりに誘い、力のねじり合いとなった。この日いつになく冴えていたのは井上。攻めを焦らず、自陣をしっかり補強し、渋い好手の連続で中原を圧倒した。終盤も腰の入った寄せを見せ、井上がA級初日を白星で飾った。


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