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4月25日(金)
 四ヶ月にわたったペルー人質事件が解決した。今朝の新聞を広げ「全部で17人の犠牲者」の文字を目にしたとき、おやっと思った。昨日までの報道では犠牲者はたしか3人のはずだったのに、あれからまた新たに亡くなった人がいるのかと、不思議な感に打たれた。

 読み進めるうちに、ほどなくわかった。人質となった方が1名、突撃した兵士が2名、それにゲリラ側の14名を併せると、事件の犠牲者はたしかに17人なのだ。そんな当たり前のことに思い到らなかったのは、昨日来の報道が犠牲者3人と繰り返すのを、なんの抵抗感もなく受け入れていたせいに違いない。

 強攻突入による武力解決のニュースをはじめて知ったとき、良かったと思う気持ちとは裏腹に、MRTAのメンバーを哀れに思う気持ちがわき起こった。人質となった日本人からかたことの日本語を教わっていたというあの少女たちも死んだのだと思うと、目頭が熱くなった。

 トゥパク・アマルー革命運動の主張は民衆の指示を受けるまでには到らなかった。歴史を揺さぶる大きなうねりは起きはしなかった。だが彼らを単にテロリストと呼ぶことには同意できない。少なくとも彼らの主張していたものは、貧しき立場の人間、弱い立場の人間、虐げられてきたものの叫びであったからだ。

 フジモリ政権下で拷問や虐殺、貧富の格差が広がっていることは、さまざまな情報を照らし合わせてみればはっきり見えてくる。それを打破しようと立ち上がることは、彼らにとってなにものにも代えがたい正義であったはずだ。

 アルゼンチンでもチリでも、独裁政権を倒した大きなうねりは、一部の勇気ある人々の声からはじまった。MRTAが狙っていたことも、自分たちの行動に対する民衆の指示であり、フジモリ政権打倒のための民衆の蜂起であったことだろう。

 もちろんだからといって今回のような事件が正当化されるはずもないのだが、彼らが紳士的に接していたこともたしかだろう。

 彼らは「要求が聞き入れられない場合は人質の身の安全を保障できない」とは繰り返してきたが、「人質を殺す」とは一度も言わなかったはずだ。(某新聞では歪曲して伝えられている記述もあった)

 そして、それを守った。MRTAの一人が強攻突入を知り、人質に銃を向けたものの結局は打たなかったという証言が残っている。その青年はライフルの引き金に指を当てたまま、しばらく苦慮したという。彼はその瞬間、なにを思ったのだろうか。そのまま銃を下ろし、彼は部屋を出ていった。そして殺された。

 治安を維持する上で、ゲリラやテロリストは決して許せない存在であり、MRTAのメンバー全員を銃殺することは、ぺルーという国家にとっての正義であった。また、貧しく虐げられた境遇から平凡な幸福を手にするためには、フジモリ政権打倒以外に道はないと究極の選択をしたMRTAの14人もまた、彼らにとっての正義のために戦った。正義とはいったいなんだろうか。

 理性ではもちろん、ゲリラ側にこそ非があることはわかる。突入の際亡くなった兵士の遺書が公開されていたが、それを読めばゲリラ側への怒りもたしかに湧いてくる。

 だがそれでも、理性を超えたところで、なにかが悲しみを誘う。ゲリラ側の全員射殺が人権を踏みにじるものだとする主張もあるが、そうしたイデオロギーとは別のところで、悲しみを感じる。

 強攻突入以外にどうすればよかったのかと問われれば、答えに窮する。それでも理性では割り切れないものが残るのだ。そうした溝を埋めるのは、あるいは宗教なのかもしれない。キリスト教の牧師が、涙ながらに語っていた。
「殺された14人のゲリラもまた同じ人間なのです」


 殺された少女たちがもし日本に生まれていたならと、ふと考えてしまう。そうであれば、ライフルなんてテレビや映画のなかでしか見ることなんてなかったろうに・・・。ファッションやグルメ、好きな異性のことでも話しながら、楽しい日々を送れたろうに・・・。

 今度生まれてくるときには、銃をとらなければいけないような怒りや苦しみをもたなくてもすむ世界に、生まれて来れたらいいね。
 犠牲者は17人・・・。


 MRTAはインターネットを用いることで、自分たちの主張を世界に向けて発信していました。
 そのことについて、国内でもさまざまな論議が起きました。
 しかし夕刊フジの「情報最前線」のコラムは、あまりにも幼稚かつ悪意に満ちているように感じました。
 興味のある方は以下のページをご覧下さい。


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